横浜スタジアムを語る

横浜スタジアムは、日本の神奈川県横浜市中区の横浜公園内にある野球場。日本プロ野球横浜ベイスターズの本拠地(専用球場)として使用されている。1978年(昭和53年)3月、老朽化した横浜公園平和野球場の跡地に竣工。同年より、川崎球場から移転した横浜大洋ホエールズ(現・横浜ベイスターズ)の本拠地となったほか、神奈川大学野球連盟のリーグ戦や、全国高校野球選手権の神奈川大会、横浜市長杯関東地区大学野球選手権大会(全国明治神宮野球大会出場決定戦)等、アマチュア野球の会場としても用いられる他に、アメリカンフットボールの会場としてもしばしば利用されている。高校野球夏の大会では、開会式のほか1回戦から使用され、準々決勝以降は保土ヶ谷球場にかわりメインスタジアムとなる。施設は横浜市が所有し、市などの出資による第三セクター・株式会社横浜スタジアムが運営管理を行っている。どんぶりを傾けたような外観と、横浜のイニシャル“Y”を模した逆三角形の6基の照明塔が特徴である。2003年(平成15年)からロングパイル人工芝「フィールド・ターフ」を、日本の屋外球場では初めて採用した。

神宮球場の拡張、広島の新球場への移行により、横浜スタジアムプロ野球で使用される本拠地球場で両翼・中堅までの距離が最も狭い球場となった。日本初の多目的スタジアム [編集]内野スタンドの前段は可動式。野球場としての使用時にはVの字になっているが、一、三塁側前列を移動させて平行にすることができる。この可動式スタンドや昇降式マウンドは、いずれもプロ野球以外の興行への使用を前提に設置された。このため、横浜スタジアムは日本で初めて設計段階から多目的スタジアムとして造られた建築物といえる。二塁ベース後方を中心として真円形に作られたスタンドなど、アメリカで1960~1970年代に流行したアメフト兼用球場の影響が見てとれる。この特徴は後のドーム球場等にも取り入れられた。また、プロ用野球場としては日本で初めて、建設時から全面人工芝グラウンドを採用している。なお可動席は、2003年(平成15年)に人工芝を「フィールド・ターフ」に張り替えたことに伴い、可動席を動かせるように人工芝を剥がすには経費がかかるようになってしまったため、現在は事実上移動させることがなくなっている。

最後に可動席が移動したのは、2001年(平成13年)11月23日に横浜ベイスターズ横浜F・マリノスとの合同ファン感謝イベントである。これ以外にも、フットボールなどの試合の際には可動席を動かすことがあった。横浜スタジアム建設前の横浜市内には大型の競技場やコンサートホールなどが無く、スポーツや興行の分野では魅力の薄い街であったが、スタジアムの完成がこれらの分野の発展にも大いに寄与した。長年にわたり横浜国際女子駅伝の発着会場となったほか、Jリーグ草創期にはグラウンドに天然芝のマットを敷いてプレシーズンマッチを行ったこともある。また、コンサート会場としても数多く利用され、国内外の多数の有名アーティストが過去に大規模コンサートを行なってきた。しかし屋根がない横浜スタジアムは、天候によってイベント開催の可否が左右されやすく近隣への騒音問題もあり、また3万人収容という施設に応じた集客が難しいことから、横浜アリーナ横浜国際総合競技場(現・日産スタジアム)が完成した1990年代以降、野球以外でスタンドが満員になるような大きなイベントにはそれ以前ほど使用されなくなっている。

だが、TUBEは20年以上にもわたり毎年8月で横浜スタジアムでコンサートを実施しており、夏の風物詩となっている。また、近年では毎年夏頃に1回程度、TUBEおよび国内の有名アーティスト1組が野外コンサートを開催しているほか、2006年から2009年までは横浜レゲエ祭も開催されていた。

建ぺい率の問題
建物の立体的な外観は、他の野球場に見られるような垂直的なそれではなく、スタンドの上辺が広く下辺が狭い逆円錐形をしている。これは都市公園法施行令第6条1項1号で定められている、都市公園内運動施設の建ぺい率規制によるもので、スタンドの下辺をもって建ぺい率を計算するためのいわば苦肉の策である。兎にも角にも面積上の問題をクリアするためにかなり無理のある設計を行っている。また、近年に建設されたいわゆる「国際規格」の野球場に比べ、収容観客数の少なさやグラウンド面積の狭さが指摘されて久しいが、法規上の限界の中で設計されていることから、スタンドの増築を伴う観客席増設や、スタンドの構造変更を伴うグラウンド面積の拡張なども、法令の改正がなされない限り事実上不可能である。ダッグアウト裏やグラウンド内に場所が確保できなかったため、ブルペンは外野スタンドの下に存在する。ちなみに、ブルペンは目隠し用のテントと侵入防止用の鉄柵を隔てただけで横浜公園に面しているので、球場外からリリーフ投手の投球を受ける捕球音やブルペン捕手の掛け声を聞く事が出来る。

横浜スタジアムの外野フェンスは高さがドーム球場並みに5mもあり、グラウンド内でバウンドした打球がフェンスを越えてエンタイトルツーベースに至ることはほとんどあり得ず、フェンスによじ登ってのフライ捕球もまず不可能である。また、フェンスが高いとは言っても、外野スタンドが狭いため、プロのパワーヒッターであれば場外ホームランを打つ事も可能である。ダッグアウトブルペンの間は連絡路がなく隔絶されているため、プロ・アマ問わずリリーフ投手は試合前からブルペンで待機するか、試合中の攻守交替時にグラウンドを歩いてブルペンに向かわなければならない。また、ブルペンからマウンドまでが遠いので、プロの試合における投手交代時は通常、リリーフカーを使用する。球場誕生時は日産自動車のブルーバード910型のオープンカーを使い、その後は同社のBe-1やエスカルゴを経て、現在のリリーフカーはトヨタ自動車のスポーツカー・MR-Sを改造したものを使用している。